SSブログ

ACE TONE SA-3 その3 [Guitaramp]

sa3scm-7a30-1.png
SA-3プリアンプ回路図です。
sa3scm-7b17.png
SA-3パワーアンプ回路図です。

 以上の回路図はやっとこさコピーしたもので、1回目のコピーでは間違いが多く有り修理をしながら訂正した結果がこれです。部品の定数を読めない箇所や、詳細の分からない部品はそのままの形で書いておきます。まだ間違えている箇所が有るかもしれませんが、細かい違いはもう気にしない事にします。もし、間違いが有っても、必要な作業の都度に確認すれば良いだけのことです。

 まずインプット、おなじみのHiとLoの二つがありますが、その他にTREと表示されたジャックが1個有ります。これはTREBLEです。つまり高音を強調したトーンになりますが、役に立たない残念な回路です。
 プリアンプもパワーアンプも、半導体は全てNPNシリコントランジスタです。この当時、FETはまだ登場しません。ですから、入力インピーダンスは今のアンプと比べると多少低めだと思います。
 トーンコントロールはCR型で、音色はあまり変化しません。その代わりに、パワーアンプの前にある押しボタンスイッチのフィルターで3色の切り替えをしています。このような構成は、内容は少し違いますが昔のAmpegのアンプに多く見られます。
 総合的に見るとこのアンプのトーン回路の音は、あまり良くはありません。まあ昔の設計なので仕方ありません。
 トーンコントロールの後には、ビブラート回路が有ります。これはトレモロではありません。当時、というか少し前の60年代初頭、フェンダー社のブラウントーレックス・アンプやVOXのAC30が真空管のビブラート回路を採用していました。当時ビブラートというのは、トレモロよりも高級だと思われていて、回路も複雑で部品も多く、設計もめんどくさい代物でした。しかし、その音は、今でもブラウントーレックスやAC30で聞けますが、つまらない物でした。このSA-3も例外ではありません。ビブラートの音は、まず使えません。フェンダー社でも63年からのブラックフェイスでは、ビブラートをやめて、有名なフェンダー式トレモロになっています。SA-3は67年ころの発売なので、完全に流行に乗り遅れてました。
 まあ、昔のアンプなのでこんなもんですが、もしこのアンプをもっと良く鳴らせたいと考えるのであれば、このビブラート回路は撤去して、信号をスルーさせた方が良いです。今回は、そこまではしませんが。
 それから、このビブラート回路には、たぶんフォトカプラと思われる部品が2個使われています。回路図中でただの四角形で表示したのがそれです。この部品の詳細は分かりません。

 そんで、インプット・トランス式のパワーアンプです。これは後でアンプが稼働してから調べてみると、とても面白いアンプでした。実は、このパワーアンプは後日改造しました。改造後は、ここだけ取れば、真空管アンプにも負けない内容になりました。後日説明しましょう。

 話は前後しますが、回路図が一通り取れるとアンプの内容が分かってきます。
 ざっと考えて、電源トランスと半導体はまあ使えるだろうと予測します。仮にこれらが壊れていても何とか代わりの部品は有るだろうと、勝手に決めます。実際苦労はしますが、なんとかなります。
 終段とドライバーに使っているパワートランジスタがちょっと心配ですが、この2SD130は、実は中身は2SD880と同じようです。外観は2SD130がカンタイプで、2SD880がプラスチックモールドですから、取り付け方法が異なりますので、もしその場合は多少の金属加工が必要になりますが、これもなんとかなります。でも結果としては、そうはならずに済みました。
 50年も前のアンプですから、電解コンデンサは全部交換します。インプットとフットスイッチのジャックは、もうすでに錆びていて全部交換です。
sa3-1.JPG
 スピーカーは埃だらけです。特に取り付けて上に向いているコーンの部分には厚く堆積しています。取り外して掃除します。水彩絵の具の筆を箒にして掃除機で埃を吸いながら作業します。コーンに埃が付着したままだと、たぶん音も変わるし、なにより衛生的に悪そうです。テスターで導通を見て、約6から7オームくらいならたぶん使えます。もう一度キャビネットに取り付けて、音の善し悪しは他のアンプに接続して確かめます。やぱっし、、、昔の日本のギターアンプです。低音もやせていて、高音も不足して、ブライト感もなく、もたっとした張りのない音です。これは、「太い」などと喜べない音です。まあ、期待する方が悪いんだけど。
 というところで、やっと実際の作業を始めます。
sa3-27b.jpg
 電源プラグは写真のようにブレードが曲がっています。これは古いアンプではよくあります。私は迷わず新品に交換します。バカ高い電源コードや電源プラグで音が良くなるなんて、私は信じてませんが、電源プラグは曲がったのより新品が良いのは確かです。
 電源コードは、UL規格品のSVTが使われていました。電源トランスには米国とヨーロッパに対応したタップが有りますので、この当時のエーストーンは本機で輸出仕様になっていたことが分かります。
sa3-29b.jpg
 電源プラグと電源コードは、日本の電取規格品の12Aに交換します。電源コードはシャシ内で、コードクランプにより固定されます。これも当時の日本の電気製品ではちょっとめずらしく丁寧な作り方で、やはり輸出を強く意識しています。
sa3-12.JPG
 整流ダイオードは1A品を4個、ラグ版に組んでシャシに取り付けてありました。しかし、8Ω30Wアンプの電源は、最大出力時にはピークで2.7Aが流れます。整流のダイオードブリッジの1個のダイオードには半波が流れますから1.35Aのような気がしますが、そうはいきません。瞬間には2.7Aが流れ、その分VFが上昇します。また実際には、整流に要する時間は1/50秒よりももっと短いので、瞬間にはもっと大きな電流が流れています。
 とにかく、1Aダイオードではちっと荷が重いのです。また昔は歪みなんか使わないのが普通でしたが、今時のオーバードライブなんぞやると、1Aダイオードは飛んでしまうでしょう。飛ばないまでも重労働することになり、ある日突然、、、
 また、昔と違って今では少し大きなダイオードも安価に買えますので、200V6Aのブリッジダイオードに交換します。この部品は、そのままシャシにネジで固定できます。また鉄のシャシでも、このくらいなら多少は放熱できます。
sa3-30b.jpg

 前述の変なブレーカーを撤去して、普通のヒューズに変更します。ついでに、2次回路にもヒューズを入れます。2次ヒューズは、電源トランスと整流ダイオードの間に入れます。こうする事で、整流ダイオードや2次回路電源配線がショートするような、放置しておくとアンプに重大なダメージを与えるような異常時には短時間でヒューズが切れます。
 ただし、たとえば終段のトランジスタに異常な電流が流れたり、抵抗が燃えたくらいの事ではヒューズが切れないこともあります。注1参照
sa3-28b.jpg
 1次ヒューズにはT1.25Aを、2次ヒューズにはT3Aを使います。ただし、このヒューズの値は、測定器を使って実際の電流の実効値を計って決めます。また、測定器は普通のテスターではだめで、HIOKI 3182 等の電源専用の測定器を使います。
sa3-31.png
注1、2次回路で何かが燃えても1次ヒューズが切れない事態は、実際に多くあります。特に、電源トランスがコスト重視で不当に小さい場合には、電源トランスが過熱した状態で、2次回路で電源がショートしても1次ヒューズが切れない事が起こります。この状態になると、2次回路はどんどん加熱して、トランスも加熱するので、ショートしたとは言え、加熱したトランスの抵抗があるので流れる電流はある値で制限されます。結果、その電流値が1次ヒューズの値以下なら、この状態は半永久的に続きます。そのまま続けば、何が起きるか?恐ろしい事態ですが、条件が整えば、実際に発生します。私は1度出会ったことがあります。2次ヒューズはこうした最悪の事態を、ある程度防止する事が可能です。
 ただし、100%防止するためには、電源トランスの中に温度ヒューズを入れておく事が必要です。現在市販されているまともなメーカーのギターアンプにはちゃんと温度ヒューズが入っています。しかし、昔のアンプには有りません。もちろん値段の高いビンテージアンプにもありません。
 ですから、ビンテージアンプの取り扱いはご用心。簡単に言うと、絶対にやたらに大きな数値のヒューズを使わないことです。ビンテージアンプを見ていると時々10Aとか大きな数値のヒューズが入っている事がありますが、自殺行為です。ヒューズは、たとえ時々切れるとしても、必ずメーカーの指定値を使います。また、アンプを使わない時は電源プラグは必ず抜いておく事です。

sa3-10.JPG
 電解コンデサを交換します。50年前と今では部品の大きさが違います。同じ仕様ならうんと小さくなってしまいました。幾つかのコンデンサでは小さくなって取り付けに問題が出てきます。電源の一番大きな平滑コンデンサでは、元の2倍の容量にします。こうすると、元の部品と直径が同じか、近いので、そのまま交換できました。2200UF63Vは4700uF63Vにします。ここのコンデンサや、電源のその他のコンデンサも元の容量よりも大きくても差し支えない部分は多くあります。電源のコンデンサは大きい方が音も良くなります。また電源のメインコンデンサは4700uFにしたのですが、整流ダイオードを6Aにしたのは、そのためにも有効です。元の1Aダイオードでは、この点でも不利になります。
 470uF63Vは1000uFにしましたが、まだ直径が足りない。そこでテープを巻いてホルダーに取り付けます。テープはビニールテープでもいいのですが、難燃性が無いので、ガラス繊維のテープにしました。
 また、新しい電解コンデンサは基板用で、端子の形がスナップインしか有りません。昔の孔の開いたラグ型がいいのだけど、無いので仕方なく使用します。
 他の基板の上に載っている電解コンデンサも全部交換します。電源のフィルターに使っているものは容量が元のものより多少大きくても大丈夫です。信号の通過するものや、アンプの動作に関係するものは同じ容量を使います。耐圧は、基本的には元と同じものを使います。しかし、昔のアンプでは6.3Vや10Vといった耐圧の低い電解コンデンサが出てきますが、これらは16VでもだいたいOKです。
 電源電圧のぎりぎりの耐圧のものや、回路によっては耐圧を超える電圧がかかる可能性がある箇所などは注意します。たとえば、パワーアンプ出力の470uF35Vは、63Vに変更しておきます。しかし、逆にやたらとどこでも耐圧が何倍も高いものに変えるのはあまり良いことではありません。特に信号レベルの低いアンプに使用されているものは、なるべく元の耐圧に近いものを使います。
つづく

林クラフト ホームページはこちら
http://www002.upp.so-net.ne.jp/hayashi_craft/



 













  





nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

ACE TONE SA-3 その2Big Roller BR54 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。